カテゴリ:ピアニスト( 27 )

ジュゼッペ・アンダローロ

1982年、イタリア パレルモ生まれ。
何かの音源を過去に聴いたことがあり”語る”ような演奏でマークしていた人です。
彼のリサイタルが近くであったので8月、多忙でしたが女3人で行ってきました。

プログラムはハッキリしていなくラフマニノフ他としか書かれていませんでしたが
一聴の価値ある人ぞ、と思いチケットを買っていました。
橋本の杜のホールという木の響きを大切にしたとても音響の良いホールでしたが
知名度が低いのか半分くらいの入りでした。

演目
モーツァルト:ニ長調 ロンド K.485
シューマン:幻想小曲集 Op.12
ラフマニノフ:10の前奏曲 Op23より2番.4番.5番.
リスト:ハンガリー狂詩曲 2番

聴き応えのある面白いプログラムでした。
最初のモーツァルトのロンド、小学生から大人まで弾く曲、
あんなに美しく可憐な演奏は初めてでした。
天使の声とでも言うか、そんな触ると壊れるような繊細な演奏で魅されました。。。
とてもさりげなく、ブレハッチの即興性とはまた別の
良い意味で行き当たりばったりの演奏だと思いました。
次回弾いたらまた違う様子になるにちがいない。

2曲目の幻想小曲集の飛翔で
あれ?これはかなりの、でなく、すーーーごいテクニシャンだな。
すごいって言葉はただの感嘆符の言葉なので使いたくないのですが
その演奏においてはすごいとしか言いようがありませんでした。

ラフマニノフも歌と指のどちらも冴えてスケールの大きい演奏でした。

最後のハンガリー狂詩曲にいたってはもうどうなるか予想がつきました。
私の耳が追いつかないほど速い、速い、あっという間に終わりました。

もうひとつ驚くことにミスタッチが聞こえない。
何この人??お化けか天才か??

アンコールも盛りだくさん、リゲティやゴドフスキーの難曲エチュードもさらりと・・・

なんだか、あまりの鮮やかなテクニックが後に残り、仇になったような・・
彼の持ち前の叙情的な歌が隠れてしまい私はちょっと残念。。

「あんなに完璧なテクニックって天性のものだろうね、でもやっぱり練習してるのかなあ」
どっちだろう??

せっかくイタリア語がしゃべれるんだから本人に直接聞いてみよ、と
サイン会のとき、お話できるチャンスがあったので友理が聞いてみました。
「素晴らしい指をお持ちですがたくさん練習されていますか」
「全然!!」
やっぱり・・・・イタリア人が謙遜などするはずがない。
イタリアでも彼の私生活はある意味すごいとお友達から聞いてはいたが。。。

たいていコンサートでは何かしらエネルギーをもらい、やる気が起こるのですが
彼の演奏を聴いた後は、ひゅーと意気が沈んでいきました。

私たちが練習しているピアノって何やっているんだろう??
シラ~~~~みんなで落胆して帰ってきたリサイタルでした。。。
その場で思い出した曲をこんな感じかなという感じでしゃしゃっと弾いて・・・
それでいて日夜練習している人よりずっとうまい。
ああいう人を天才っていうんだろうね^^;
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by studioacanthus | 2008-09-26 22:16 | ピアニスト

ボローニャでのアルベルト・ノゼさんのリサイタル

先日、アルベルト・ノゼさんの演奏会がボローニャで、
しかも私の家に近いところであったので行ってきました。
当日はあいにくの大雨。イタリアはめったにまとまった雨なんか降らないのに
その日に限ってザーザー。ズボンも靴もビショビショ。
でもお客さんは400席くらいのホールにいっぱい入ってました!

プログラムは
ベートーヴェンンのソナタ op.27-1 、op.27-2、
プロコフィエフのロミオとジュリエット。
彼はロミ、ジュリのヴェローナ生まれです^^
約1時間のプログラム、休憩無しでした。

演奏は・・・素晴らしかったです。
ただホール(教会だったんですが)の残響がすんごいあったし
後ろのほうに座ってたので細かい音はあまり聴こえなかったのと、
プロコフィエフの時にはすでに弦が狂ってきてたのが残念でした。
27ー1は彼のCD(ライヴ)を持っていたんですが今回の演奏会では
格段腕が上がってて、おぉぉぉぉーと感激。ミスがずっと減っていました。
27ー2は有名な月光。
3楽章がすごい勢いでした。とても速いんですが手の内にきちんとおさまっていて
以前のような気持ちの勢いに押されておっとっとという感じが全くなくなっていました。
すっかりプロフェっショナルな演奏です!当たり前か^^;
もうバリバリ舞台慣れしている感じで落ち着いてダイナミックに。
左手の低音の大音量に負けない豊かな右手。
ショパンコンクールのときのようなサラリとした歌ではなくかなり濃い歌になっていました。
マルガリウス先生が以前『ノゼは本当にまじめでよく練習する。』とおっしゃっていました。
プロコフィエフではあの『のだめカンタービレ』のマエストロ ミルヒーのテーマ
の曲があります。その曲が出てきた途端
頭の中に『おぉマエストロだー、あれが本当にマエストロ?!』の場面が出てきたり^^;
音楽というのはそのときの気持ちや匂りや景色を思い出させてくれますね、
何年経っても。

演奏が終わった後
私の顔を見るなり『ユーリー!! 3年ぶりだねー。』
え?3年も・・・。月日が経つのは早いですね。
ロン・ティボーのガラコンサートで会ってからもう3年も経ったんだ。
頭を何べんもなでなでしてくれ
『大きくなったねぇ、成長したねぇ!』
身長、あんまり変わってないはずなんだけど~。
『20歳になったよ。』
『まだ20歳なの。ユリがイタリア語しゃべってる!』
『大学にも行ってるから。。ボローニャに引っ越してきて2週間なの。
ペットの亀さんたち元気?』
『もう4匹とも大きくなりすぎちゃって誰かに2匹あげなきゃいけないんだ。
それにしても大きくなったねぇ。』
(そんなに変わったかな?^^)
最初に会ったとき私は14歳の終わりで今は20歳だからそれなりに成長はしたかな。
なんだかやたら成長した、ばっかり言ってました^^;
他にもたくさん聞いたり話したいことあったのですがお客さんがたくさんいたので
断念。。。
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スカラ先生やアカデミーの事務の方たちもいらしてて一緒に写真を撮りました。

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by studioacanthus | 2008-05-29 23:35 | ピアニスト

アンドラーシュ・シフの演奏をテレビで観て

昨晩、アンドラーシュ・シフの演奏をテレビで観ました。
演奏にについてとやかくは言いたくありませんが、生徒たちはきっと私の感想を楽しみに
していてくれるのでちょっとだけ触れてみようと思います。

まず、ベーゼンドルファーを弾いておられました。
が、ベーゼンドルファーらしくない音と思いましたが生の音でないので音質、
音色については何ともいえません。
そんなことよりも彼は音色そのものだけでなくもっと大きな芸術作品を描いていました。
最近日本の評論家や物言う人は音色と個性についてばかりよく述べられますが
そんなものは全体から見ればほんのわずかな一部のこと。
もっともっと大きな無限の世界があるはずといつも思いながら、
なかなか出会えなくて諦めていました。
だがシフはそれを見事に見せてくれました。
彼の演奏を聴いて特筆すべきことは、
簡単には見えない本物の歌、
リズムの間「ま」、
拍動。
拍とリズムは私はドイツ物の芸術作品においては音色よりも優位にあるはずだ
と確信しています。

彼は私にとても幸せな時間を与えてくれました。
「正しく伝える音楽家(遠藤郁子先生の言葉)」が減ってしまった昨今、
久しぶりにシフの演奏を聴いて喜びと安堵感を感じました。

彼が「正しい芸術作品を正しい演奏」で私たちに伝えてくれたことを
私はとても有難いと思いました。

余談ですが、シフの顔を伏せてあの演奏をコンクールの書類審査に持っていくと
ほぼ間違いなく落とされるでしょう。
個性がない。テンポが遅すぎて流れていない。と言われるに違いありません。

シューマン、ベートーヴェン、アンコールのバッハ、シューベルトと
ロシア物を一つも入れていないことにも彼の思う芸術の深さがわかりました。

シューマン特有の咳き込む付点のリズム、難しい3拍子の拍動。
どれも精神的神業のようでした。
ベートーベンの格調高い構成、円熟した感性。ものすごい集中力に圧倒されました。
音量で圧倒するのでなく精神力で人を圧倒させるところがやはり巨匠です。
一瞬若き日のホロヴィッツを見るようでもありました。
ワルトシュタインの3楽章のトリルは数をあまり入れていなくて何故?
と思いましたがそんなことは些細なこと、
最後のオクターブのグリッサンドは見事でした。
このグリッサンドを聴いてベーゼンドルファーを弾いている意味が私なりに解けました。
今まであのような完璧とも言えるグリッサンドを見たのは生まれて初めてであり、
(ケンプの録音では聴いたような?)今後も見ることはないでしょう。
本当に生きていてよかったと思った瞬間です。
ベートーベンのテンペストのレチタティーヴォ、ワルトシュタイン3楽章の冒頭など
研ぎ澄まされた耳により創られたペダルの混ぜ合わせも何とも自然で心地よかったです。

アンコールのフランス組曲はすべてノンペダルでしたが安易に真似をしてはいけません。
また彼の演奏を聴いて”バッハはペダルを使うべきでない”と短絡的に思ってもいけません。
録画から垣間見れる彼独自の運指により美しいレガートがつむがれているからこそ
ペダルなしで弾けるのであってこれも並の人間が出来るものではありません。
彼が付けたバッハの即興装飾音や
いかにも当時の楽器を弾いているのでは、と思う錯覚を起こさせるような音が
スピーカーを通してでもよく聞こえてきました。
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by studioacanthus | 2008-04-19 21:43 | ピアニスト

アンドラーシュ・シフ

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ゾルターン・コチシュ、デジュー・ラーンキとともに「ハンガリーの若手三羽カラス」と
私たちの年代において注目されたアンドラーシュ・シフの言葉、
朝日新聞をとってない方、外国にいて読めない方のために
貴重な言葉であり共感したので抜粋してここに載せます。

       ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「私は音楽を娯楽とは思っていない。
みんなが喜ぶ演奏をキャンディーのように客席に投げ込むことはできない。
シュナーベルのようにとつとつと、自分の愛する作曲家と歩んでいたい。
人生はあまりにも短いのだから。」

「バッハは私とともに人生を歩いてくれる。
ベートーヴェンは私に人生の喜びを教えてくれる。」

バッハを弾くとき足のペダルは用いない。
「響きではない。曲が生まれた時代をかみしめることが大切なのだ。」

毎朝バッハを弾くのを日課とする一方で「ワルトシュタイン」は
50歳まで弾くまいと決めていた。
現在54歳。やっと弾ける年齢になった。

「ベートーヴェンは、耳の病気も相まってモーツァルトやシューベルトに比べ
格段に成長が遅い。でもその異様な密度の濃さが20代の頃、漠然と怖くて。」

だからこそ疑問に思う。
今の10代のピアニストたちがなぜこの曲を簡単に手にとろうとできるのか。
「芸術への畏れは知っていれば知っているほどいい」

ピアノに向かうのは1日3時間だけ。
ほかの時間でベートーヴェンに精いっぱい関心を向けてみる。
彼が霊感を得たシェークスピアやゲーテ、シラーを読んだり芝居を見たり。

~朝日新聞 2008年3月21日 夕刊より~
演奏についての感想はこちら
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by studioacanthus | 2008-03-22 20:53 | ピアニスト

ペトルシャンスキー先生の公開レッスン 2

アットホームな感じで(確かにat homeなので)和やかムードでした。
狭いレッスン室なので聴講者の熱気むんむん、大勢の方の前でのレッスン
受講者たちはきっと緊張されたでしょう。
マエストロは時にテンション高く、時に静かに鋭く、心に刺さるご注意をされました。
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手鏡にサインをして欲しいとの要望にお答えされて
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鏡を見るたびにサインが見えて気持ちを引き締めてさらえるでしょう。

その他の写真はHPのphotoに少し追加しましたのでご覧ください。
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by studioacanthus | 2008-02-17 20:52 | ピアニスト

ペトルシャンスキー先生の公開レッスン

よく晴れた寒い朝、ペトルシャンスキー先生がタクシーから降りて来られました。
『nice to meet you! 』とお互いに威勢よくご挨拶いたしました。
決まり文句の次、何を言おうかしら??何も言えないわ・・・
『I can't speak English...』
『me too,Yuri's mom?』
『ya,』
『Yuri is fantastic!!She speeks English very well more than I 』
『Thank you,thank you』

こんな感じで始まりました。
レッスンは滞りなく進みました。
たくさん弾いてくださったし、スクリャービンが絶品。。
ロシアでのルバートの解釈、時の流れ、面白かったですね。

一口でレッスンの内容を書くと
スクリャービンでは音の溶かし方、ショパンではフレーズの運び、
ドビュッシーでは色彩、モーツァルトでは躍動、
それぞれポイントがありました。
とても難しい内容のものでしたが実はこれくらいのことは
多少の専門書には書かれています。
ですから、な~んだ、わかってることばかりだからいいわ!行かなくて良かった。
なんて早合点してわかったわかったと思う方は甘いです。

文書や音符で書かれていることを音にして表現した場合
どんな響きになるか、どんな気持ちがするのか
これがピアノという楽器を使った芸術です。
時々、ピアノのHow to本を読みまくっているのにわからないと生徒が言いますが
いくら読んでも響きの答えは出てきません。
知識は増えても心に訴える音は生の音を聞かない限り
答えはいつまでも闇の中なのです。

言葉で表せない心の言葉を音にする。

言葉と音楽の響きは別の世界のものなのです。

だから本来演奏には言葉は要らないのです。
なのにトークコンサートというのがはやる。
なんだかわけのわからない時代になっています。

この公開レッスン、はじめは全然乗る気ではありませんでしたが
『先生がたくさん弾いて下さる』の一言で場所を提供しました。

小さい生徒さんは都心までリサイタルに行くことはなかなかできないので
少しでも本場の音楽を身近に聴いてもらえたらと思い開きました。

多くの人に喜んでもらえたようで良かったです。
最後のお茶は異常に盛り上がった!!

『See you again in Imola!!』でお別れをしました。
いつのことだか・・・
まずはパスポートの更新から。。

写真は後日アップします。
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by studioacanthus | 2008-02-14 22:12 | ピアニスト

アルベルト・ノゼさんより クリスマスカード

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Click for big size photo

今年もアルベルト・ノゼさんから送られてきた素敵なクリスマスカードをご覧ください。

彼が訪れた国の言葉で書かれているのでしょうか。
どこから抜き出してきたのか
日本語がちょっと・・・・037.gif
クリスマスおめでとうございます』 はやっぱり変ですね。
これを訳したのは日本人じゃないっていうのがすぐわかります。
やはり日本語は難しい!042.gif
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by studioacanthus | 2007-12-25 19:45 | ピアニスト

ゾルターン・コチシュ氏のマスタークラス

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人生最大の疲れと季節の変わり目とで体調を少し崩してしまい喉が痛いです(><)

先週、ゾルターン・コチシュ氏のマスタークラスをうけることができました。
前回は日本帰国中だったので私が受けるのは初めてです。

私は初日の午前中でした。その日はもちろん大学を休みました。
弾く前からコチシュ先生は『ワタシ、エイゴ シャベリマス。』と日本語で!
今は新曲ばかりですぐ弾ける曲が無かったのでバラードの3番を見ていただきました。

最初に通して弾いた後、また日本語で
『トキドキヨカッタ、トキドキヨクナカッタ、
キミノショパンハーComplicate、フクザツ^^』
他の聴講者は日本語だったのでキョトン。

本当にたくさんの日本語を知っておられました!
そしていつもニコニコ^^
青い瞳(ひとみ)が本当に綺麗でした。
写真ではよく見えませんが、透き通っててキラキラしてて、見惚れるような瞳でした。
あんなに目に印象が残った人は今までいません。

日本語は堪能で、しょっちゅうジョークも言われるし、
常に笑顔で本当にこれが世界のコチシュっていうほど気さくな方でした。
偉い先生ほど偉そうぶってないんですよね。
ある生徒が
『マエストロはほかでもマスタークラスをやってるんですか』
『僕はディレクターなので教えてはいない!』

先生はいつでも元気がよく、お茶目でしたが、
私の前の男の子が弾いたときは『つまんなかった。』
とか言われて、ひえ~~・・怖かったです。

ロベルト・シューマンのことを
『クツノヒト(靴の人、shoe man)』と言われたり、(ジョークです(笑))
『ワタシハ アナタヲ アイシテオリマス!日本語は長いよ!
ただのI love youなのに!』
と言われたり。
アカデミーの生徒たちとお昼を一緒に食べたときに
ドイツ語のわかる友達に私が覚えたてのドイツ語で『おいしい?』と訊いたらその友達の
代わりにコチシュ先生が日本語でわたしに『オイシイデスカ?』と訊いてきたり、
『ぼくはトロとか好きだけど高い。赤貝も好き。』 って一人でぼそぼそ。
『私も赤貝好きです。』って言ったら
『サヨウデゴザルカー!』と大声で叫んだり^^楽しかったです。

最後に写真好きの日本人なので
『写真とらせてもらっていいですか?』
『もちろん!ああああ・・・だけど写真きらーい・・・』
と駄々っ子のように顔をくちゃくちゃにして、
『デモ、イマハ、イイデス。』と言ってくれました。
母に見せたら
『コチシュは若いとき、「ハンガリーの三羽鳥」と言われ
かっこよくて若い子にモテモテだったのよ。いい手しておられるねえ。』
大学のお友達に見せたら
『これほんとにマエストロ??酒飲んでない?』
昼食のときに飲まれたので、その4時間後の

『正真正銘のゾルターン・コチシュ先生です!』

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by studioacanthus | 2007-10-21 21:00 | ピアニスト

ラファウ・ブレハッチ

久しぶりに大当たりのリサイタルでした。
私はピアノにおいては貪欲なのでなかなか感動する演奏には出会えません。
ここしばらく、私自身はハズレばかりでリサイタルから遠ざかりつつあったのですが
昨日ほど、実り多く感動したのは本当にしばらくぶりです。
また多くの生徒たちが横浜公演にも出かけていたようで
私が勧めなくとも行くようになった子供達の向学心に感心です。
ところでバッハのイタリアンコンチェルトのテンポ、生徒たちは速い速いと
言っていましたが速くありませんでしたよ。
焦って弾いているのではなく彼の意思で弾いていました。
あれを速いとか焦っていると思うなら・・・まだまだ若い~
いつも言っているようにバッハのテンポとは結果であって目標ではありません。
ブレハッチの場合あのテンポでちゃんと曲の構成が出来上がっており
音楽として見えていたので速くはありませんでした。
一つずつの音符が響きになったりテーマになったり
それぞれ役割を的確に果たしていて引き締まった演奏でした。

ドビュッシーについては(私がフランスものがあまり好きでないせいか)
うまい演奏とうまくない演奏との差が小さい作曲家なので
ブレハッチ自身が好きで弾くのは良いですが
どうしても彼のドビュッシーが聴きたいとまでは思いませんでした。

ショパンは彼ならではの演奏でした。
ショパンコンクール以後あまりよくない噂を聞いていたので
ユンディ・リのようになっていなきゃいいなと思いつつ出かけてみました。
ブレハッチは素晴らしかった。惹きつけられました。

今でも多くの人に愛されるショパンですが巷で弾かれているショパンのまずさ。。
もちろん私もうまく弾けませんが、伝染しているあのへんてこショパンを
なんとかして欲しい、と常々思っていたものですから、
ブレハッチに入り込みました。

なんといえばよいのか、
例えば野球のイチロー選手のような演奏なのです。

あたかも当たりそこないのバッティングであるように見えて
実は思ったところに球を打っている。

あたかも即興的に弾いているように聴こえて
実は入念に考え計算して弾いている。

そう違いありません。一瞬、このホールでの響きにあわせ、聴衆との雰囲気にあわせ
気分で弾いているのかと思ったけど・・・違いました。
アンコールの時に演奏はもとより、しぐさ、目線、全て計算されていると確信しました。
一般的に計算されているとか、頭で弾くと言うのは嫌われますが
それを超えた、凡人の私たちが知りえないだろう世界まで
突っ込んで勉強して弾いているのが感じられる演奏でした。
私たちにはわかりえない未知の世界を彼は知っているはずです。

彼の演奏を聴いて帰りの電車の中でこんなことを思いつきました。
天井の一箇所、投げたい所にピンポン玉(音)を上に投げるとします。
(下に投げるのは重力の助けを借りるので落とすだけで簡単なはず。)
彼は自分の思ったところ、その一箇点に玉(音)を確実に投げ当て、
それを空中(地面じゃないです)の的確な場所でキャッチする。
そしてすぐにそれを宙に浮いたまま自分の目指す場所にまた正確に投げ当てる。
それの連続。彼は音を空中でうまく操作しているのです。
このことは考えたりイメージするのは簡単だけど演奏として表現するのは至難の技。
一生ものです。
だからこそピアニストに望むのです。ピアニストに目指して欲しいのです。

よくあるパターンでは、まずピンポン玉の大きさがわからない。
つぎにピンポン玉をどこに投げたらよいかわからない。
またわかってもピンポン玉が思ったところに当てられない。
そうなるともちろん投げっぱなしで拾うことはできない。
というか世の中には音を拾うことがどういうことかさえ知らないピアニストがいる。。。
ここまでくるとこれは初歩の段階で教えた教師側の問題ですね。

百聞は一聴にしかず、で彼の演奏をナマで聴くのが一番早いです。

テレビで見たときはただの良い演奏というだけであまりぱっとしませんでした。
きっと彼のよさはテレビでは拾えない次元のものだろうと思います。

最近の演奏や教授されているものは歳のせいか、
もうすでにわかっていることばかりで時間の無駄・・・
その上社会的にも信じられないことがはびこって嫌気がさしていましたが
昨日は本当に後味の良いリサイタルでした。
なかには演奏が綺麗過ぎると思われるかたもいらっしゃるでしょう。
しかし、彼の音楽への誠実さや哲学は尊敬されてしかるべきだと思います。
これこそ、ショーでなくて芸術です。

ところで理解できないことのひとつ。
ショパンのプレリュードを前回は1~16番(たぶん)
今回は13番から24番を弾いていました。何故半分に割るのだ??
どう考えても曲の途中から弾かれるとおかしい。。
彼ほどの天才が何故プレリュードを半分ずつ弾くのかわからない??
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by studioacanthus | 2007-06-20 21:07 | ピアニスト

熱狂の日~アンドレイ・コロベイニコフ

いつの間にか毎年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに行くことが
くせになりつつあります。
だんだん広く知れ渡ったのか今年は5日間も開催され
初日は8万人も入ったそうです。
今回の聴衆はとても静かでホールも過去のものより工夫されていたのか
たまたまか、さほどひどくはありませんでした。
大きなスタインウェイがいたるところにありました。

今年のテーマは『民族のハーモニー』とかで何やらあまりメジャーでない曲が中心。
この機会でないと二度と聴けない曲も多かったように思います。

私は4つの公演を聴いてきました。
演目 ドヴォルジャーク作曲:ピアノコンチェルト ト長調 作品33
    グリーグ作曲:2つのノルウェイの旋律 作品63 
ピアニストはおなじみのミッシェル・ダルベルト
オーケストラが香港シンフォ二エッタという私は初めてのオーケストラで
指揮者は葉詠詩(中国)という女性でした。
ダルベルトについてはもう御存知でしょうから彼の演奏の感想はパス。
どちらもマイナーな曲でどうってことないまあ耳あたりのよい曲でした。
私はオケにおいては全くの素人なので思うことも少なく言葉で表現もできませんが
まったりしていたもののまずまずでなんとなく流れていきました。

あと、アンドレイ・コロベイニコフ 1986年モスクワ生まれ。
演目はラフマニノフのソナタ第2番を中心にムソルグスキー、彼の編曲物でした。
彼はこの間の浜松国際に出ていてストリーミング配信で
バッハを聴いて印象に残っていた人です。
一次予選で消えましたが私は彼の演奏に味があったので記憶に残っていました。
今回、偶然彼の名前を見つけ”なんでこんなでかい所に出てこれたのか”と
不思議でしたがナマを聴きに行ってきました。

人生知り尽くしたような色合いで美しい響きを出す。
なんか笑顔やしぐさは子供っぽい表情なのに体は大柄で
ラフマニノフに風貌が似ていて特別な雰囲気を持つ人でした。
プロフィールに
『司法試験に合格。英語の他にイタリア語、
エスペラント語が堪能。ジャズのサックスを吹く。』
やっぱり才人でした。たくさんある趣味の一つにピアノがあるんだろうって感じでした。
それにしても集中力も並でなく楽しんで弾いている感じでとても好感が持てました。

最後は庄司紗矢香のチャイコンとベレゾフスキーのチャイコン。
次にかきます。
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by studioacanthus | 2007-05-06 21:07 | ピアニスト